富裕層対象の相続税増税の抜け道
アベノミクスの一環として2013年税制改正案で成立した相続税の基礎控除縮小。
これによって、亡くなった方で相続税の課税対象者が全体の4%であったものが、6%まで上昇する。増税額は年2570億円の見込み。
相続税の基礎控除額は現状、5000万円+法定相続人数X1000万円であったが、2015年1月から4割減の3000万円+法定相続人数X600万円となる。
また、税率も上がる。最高税率が今の50%から55%に上がる。
例を挙げる。
遺産総額 現状相続税額 改正後相続税額 増税額
5千万円 0円 10万円 10万円
8千万円 0円 175万円 175万円
1億円 100万円 315万円 215万円
10億円 1億6650万円 1億7810万円 1160万円
20億円 4億950万円 4億3440万円 2490万円
10億を超える遺産だと1000万円を超える増税額。
相続税の増税はいままでにない改革とされている。
自民党は富裕層からの支持が高く、反発も大きいはず。
それなのに、意外にすんなり法案は可決された。
地価の高い東京都選出の国会議員からの反発もなく。
なぜか。
抜け道があった。
小規模宅地特例の拡大だ。
そもそも小規模宅地特例とは、亡くなった人の宅地を配偶者や同居する子供が相続する場合、宅地の評価額を8割減額し、遺産額を少なくする特例。遺産額が少なくなることで、課税対象から外れたり、税額が減額される効果がある。
現状の特例対象の敷地面積は居住用の宅地で240平方㍍(約73坪)。
これが、330平方㍍(約100坪)まで拡大する。
これによって誰が恩恵を受けるのか。広い宅地を持つ家庭だ。
都内は賃貸に住む人が多く、自宅の土地を持っている家庭は29%。このうち宅地が200平方㍍以上の家庭は13%。これらから勘案して、特例拡大の恩恵を受けるのは全体の3%ほどの豪邸に住む家庭しかない。
富裕層への課税強化を目的とした相続税増税の趣旨からかけ離れた、実態は中間層への課税強化となっている。